夏さ、また。

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浄土ヶ浜旅行

父親の一周忌で実家に戻った初秋。行こうと思いながら行ったことがなかった、浄土ヶ浜に出かけた。場所は岩手の沿岸部にある宮古市だ。

 

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こんな綺麗な海があるところ。母親いわく幼い頃に家族旅行で行ったことがあるらしいが、基本沿岸部の記憶は、リアス式海岸の曲がりくねった道をお父さんが頑張って運転するのを車酔いでフラフラな状態で見ていた事だけ。父の背中と青い海しかない。

 

山生まれの私にとっては、岩肌の白と海の青と空の青がずっと続いているからか、あまり沿岸部の違いが分からない。もちろん、震災前の記憶である。海なんてちょっと運転すればすぐ着くのだが、それでも用事がなければ殆ど行かなくなってしまった。

 

今も、整地された住宅跡地や、真新しい防波堤の写真だけは撮らずにいる。震災遺構も行ったことがない。ただ、車で通る。それだけで色々と思い出し、複雑な気持ちになる。でも、海は綺麗だし三陸はご飯が美味しい。出身の人達は職場で優しかったから好きだ。

 


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出発前に実家の犬。かわいい。ペロッとしてるのがあざとくてかわいい。君はあざとくて何が悪いのに出演できるぞ。


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途中、釜石市に寄った。ラグビー日本製鐵の街。もくもくとあがる煙は、この街の象徴なんだろう。室蘭の製鉄所の煙が消えたニュースがあったけど、ずっとそこにあるものが無くなるのは堪える。

 

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工藤精肉店食堂部のカツカレー。名前を聞くとなんだ食堂か?と思ったりすると思うし、店のただずまいも昭和のお店かと思うだろう。カレーも、家のカレーのようなものかと思うだろう。侮るなかれ、抜群に美味しい。こんなにスパイスのパンチと、果物野菜の甘みが感じられるカレーは食べたことがない。

 

量が多く見えるが、ペロリと食べれる。スパイスは効いてるが、辛いのが苦手な私でも食べれる。果物の甘みは感じられるが、別に凄い甘い訳では無い。家のカレーでもなければ、インドカレーでもない。美味しい。これに限る。

 

精肉店だからか、分厚いカツは難なく噛み切れるほど柔らかい。美味しくて食べる手が止まらない。店員さんがおば様たちなのもいい。地元の学生の集まりや、町内会のおじさん達、私のような観光客やバイクの集団もいた。駐車場は分かりにくいけど、釜石に来たら是非食べて欲しい。


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そこから車を走らせて、宮古市についた。不安になるほどの山道を走ると、急に駐車場がある。そこからエレベーターで崖の下に降りると、突然眼前には海が広がる。入江だから波は穏やかだ。


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目当ては、さっぱ船遊覧で青の洞窟まで行くアクティビティだ。さっぱ船は小型モーターボートのことで、船頭さんの案内で海にある青の洞窟を目指すコースになる。かなりの人だったので、1時間ぐらい待った。


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救命胴衣を着て出発だ。海は透き通っており、魚や海底までくっきり見える。馬力が出るのでなかなかのスピード。

 

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 遠くの方に見えるは、The浄土ヶ浜みたいな双子の岩。波は穏やかで、辺りをうみねこかカモメが飛んでいる。さっぱ船からえびせんをあげることも可能なのだが、陸からでもあげれるので陸からがおすすめ。遠くから見た限りだが、えびせんをあげている船は鳥に目をつけられ、ずっと囲まれていた。さながら空母を狙う戦闘機だ。


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天気が悪い予報だったが、晴れてよかった。


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船頭さんが色んなことを教えてくれる。この島の上には鳥居があるとの事。あそこまで登るのは大変だ。

 

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 動画ばかり撮ったせいか洞窟の写真を撮り忘れた。でも、綺麗だった。その洞窟は、昔八戸まで繋がっていると信じられてたらしい。奥の方では潮が吹き、本当に遠くまで繋がってるような気がする。あまりに狭いので、小型ボートでしか行けないらしい。

 

海底は透き通る青で、岩肌にはウニもいた。豊饒の海、この穏やかな水面と激しい岩肌。これぞ三陸の原風景だ。

 


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 遊覧が終わり、陸に到着。足元がフラフラするのは、船に乗っていた名残だろう。鳥たちがいるので、えびせんをばらまく遊びをした。鳥たちがいない場所に向けてえびせんを投げると、どこにいたのかそこら辺から勢いよく集まり取り合う。ただし、意地悪しすぎると袋ごと取られたり、顔を覚えられてもっとよこせと催促されるので注意だ。


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 浄土ヶ浜と言えば、みたいな所まで歩く。昔、松島の遊覧船か八戸の蕪島か忘れたが、えびせんを袋ごと持ってかれてしまい、泣いていた幼い兄を思い出した。


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透き通る水面。ここを極楽浄土に例える所以も分かる。同じく白い砂地と水に囲まれた恐山も、昔の人はこの世ではないと感じたらしいが、この違いはなんだろう。山ゆえの閉塞感か。天国は上にあるが、恐山は天に近い。安徳天皇が入水した時、海の下にも都があると言った。西洋とは違う感性なのだろう。


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 写真が下手だが、良くポストカードになるところ。近くにレストハウスがあって、お土産も買える。夏は海水浴場にもなっており、結構な評判だという。近くのホテルも有名なので、是非宮古に来てください。


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 水切りして遊んでいる人や、浜と言っても砂地というより大きめの砂利なので、座ってぼんやりと海を見ている人もいた。ここは極楽浄土。早朝、ここから朝日が登るのは美しいだろうなあ。


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地元のお祭りがあるらしく、街は賑わっていた。地元のスーパーでワカメと松前漬けの素を買い、東京にいる同級生に実家にあったチームNACSのDVDと共に送った。いか明太や数の子が入った松前漬けなど、酒のつまみをいくつか買って帰路に着いた。

 

帰り道、真っ暗な中で遠くにある大船渡の街の灯りを見た。道を進むと、まだ真っ暗になる。私の故郷もそうだが、まだ海岸線には光がない。ぽっかりとした闇と、道路沿いにかろうじて電線があるだけだ。街灯もない。人も車もなければ、木々も家もない。海上の暗闇が、ずっと延伸してくるのだ。盛り上げられた土地にある、大きな幹線道路までその闇は続く。

 

慣れたくないが、当たり前になってしまったその景色を見ると辛くなる。沿岸部にゆかりがあった色んな人を思い出しては、深く頭を下げたくなるような気になるのだ。