夏さ、また。

日々のことを、だらだら書いてるだけです。

アザラシさん

「家族が増えました」という題名や書き出しから始まるブログや記事を見かけた時、大概は結婚か妊娠か出産かと予想を立てて読んでみると、やれペットを飼ったというものが多い。

 

  別に芸能人が犬や猫を飼おうがどうでもいいと心底思うのだが、何となく一呼吸を置いて開いてしまう自分の臆病さが悔しい。別にどうでもいといいながら、田舎生まれの噂好きが顔を覗かせてしまうのだ。そしてそっと、そのページを閉じるのは変わらないというのに。

 

さて、そんな前置きで申し訳ないのだが、人生で一度ぐらい使ってみようと思う。「家族が増えました。」それはアザラシのぬいぐるみである。

 

このブログによく登場しているが、私は上京をきっかけに遠距離恋愛をしている。いや、恋愛というには初々しい気持ちや激しい念の類も今や薄れているので、ただの遠距離逢い引きというか、恋愛という言葉の艶やかさに気が引けてしまうのだが。

 

その日は三連休が始まる日の夜だった。連休明けに東京で泊まり込みの研修があると言っていた彼は、これから海外旅行に行くのか?と尋ねずには居られないほどの大荷物でやってきた。大型のキャリーバッグにリュック。仕事だからスーツは必要だと思われるが、我が家で洗濯もできるのだ。

 

「海外でも行くんですか」と思っていた煽り文句が口に出た。狭い私の部屋の床が埋まってしまっている。皮肉を笑い声で躱した彼は「そう言っていられるのは今のうちだ」と言う。

 

まず机に上がったのは百味ビーンズ。先週、大学時代の友人たちの誕生日祝いに関西に旅行に出かけたことは聞いていたが、まさか缶で買っていたとは。しかも普通のグミだと思って買ったらしい。ソーセージ味を食べて悶絶していた。

 

私は変な味が食べれないので、とりあえず安全そうなピンク色のゼリービーンズを摘んで恐る恐る食べたが、口に広がるは甘い味。綿菓子味らしい。よかった。カンカンはとてもかわいいデザインだったので、あわよくば置いていって貰うように頼もう。

 

そして、パンパンになったリュックから仕事用のパソコンを取り出した後、渡されたグレーの物体。これが、新しい家族になったアザラシさんである。

 

元々、アザラシが好きなのは彼の方であった。動物園が苦手で水族館が好きだという彼と、コロナ禍の間車に乗って各地の水族館を巡ったことがある。彼と出会う前、私は水族館といった大水槽のエイこそが至高だと思っていたが、今はアザラシの水槽で立ち尽くすことが多くなった。

 

男鹿水族館のおんぷちゃんと、海遊館のミゾレちゃんが好きだった。2匹とも若くて、ぷかぷか浮いていて、懐っこくて可愛かった。海の犬と誰かがアザラシのことを言っていたが、それほどかわいい生き物だ。

 

アザラシさんは京都水族館からやってきた。旅行中、水槽のガラスに鼻を押し当てて浮いていたアザラシの写真が送られてきたので、その子かもしれない。

 

何となく、愛らしいものには「さん」をつけてしまう。友人たちの名前をさんを付けてしまう。実家の犬も、ごまさんとくるみさんと呼んでいた。愛車に載せていたカービィのぬいぐるみもカービィさん。ただ、愛車のヴィッツはヴィッちゃん呼びだった。厳ついボディだったせいだと思われる。

 

私は大いに喜び、彼をほっぽり出してアザラシさんに夢中の連休をすごした。すべすべとした体は、掴むともちっとする。不機嫌そうな顔は可愛らしい。寄りかかってスマホで動画を見ると安心感もくれる。

 

我が家にぬいぐるみはいくつかあるのだが、それらは本棚の1番上に飾られている。所謂、観賞用だ。しかしアザラシさんはまだ新しく、触り心地もいいのでまだそこに列していない

 

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 こんな感じで、出かける時は布団に入れてあげている。不機嫌そうな顔が良い。たまにソファにも座らせているが、やはり布団にいる時の方がしっくりくる。アザラシさんのおかげで、私は毎日ぐしゃぐしゃにしていた布団を、何となく整える習慣が付きそうだ。

 

大荷物に対する皮肉を浴びる中、決して屈せずこのアザラシさんをプレゼントしてくれた彼に感謝。これで、これからの寒い季節を乗り越えられる。しかし、アザラシさんも寒いのは嫌だと思うので、目下毛布と購入を検討中だ。アザラシさんと越冬するために、部屋の冬支度を始めないといけない。