夏さ、また。

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甘すぎないあまいもの

   美味しいケーキ屋を見つけた。私の中で美味しいお菓子屋というものは、「甘すぎない」という裏切りをもつという条件がある。お菓子は甘い、これは当たり前だ。しかし、まれに甘すぎず、素材の味すら感じられるお菓子に巡り合うことがある。あんこの豆の味が広がる豆大福、しっかりと地の味が感じられるきんつば。米本来の甘みがやさしい団子、乳製品のまろやかな濃くを感じるシュークリーム、果物の甘さが際立つショートケーキ、バターが主役のほろほろとしたクッキー。

 

 甘すぎないあまいもの。これは前の職場で激務な中、こっそり買ったケーキを昼休み中にパートの方と上司の3人で食べてた時に決めた、スイーツに対する最上級の褒め言葉である。甘いことは当たり前だ。でも、甘すぎないのに美味しいという境地にたどり着いたスイーツは、確かな腕によって作られているという論である。

 

 甘くないからといって、物足りないなんてことはない。満ち足りるのだ。一緒に飲むコーヒーや紅茶すら、いつもよりおいしい気がする。このお菓子に関わる全ての品の良さを底上げしてくれる。このまま、身に着けたヨレヨレのTシャツもいい感じの素材になったり、腕に着けたチープカシオもロレックスに底上げされないかな。

 

 このミラクルなお菓子屋は、何故かどこもメジャーではない場所にひっそりとある。甘すぎないフルーツタルトの個人的名店は、田舎の街道沿いの古い街にあった。きんつばは、東京の住宅街を散歩してたら見つけた小さな和菓子屋にあった。学生時代に見つけた美味しいケーキを出すカフェは、金沢のひがし茶屋街から人気のない住宅街へ歩いて行った場所にあった。そして、今回のこのケーキは住宅街にあった。

 

 どのお店も、大都会にある訳でもないし食べログやグーグルマップの口コミがずば抜けているわけでもない。行列もない。共通点は、地元の方に愛されており、10年以上続けているお店であることだ。晴れの日にお出かけして食べる特別感もいいが、生活に寄り添う甘いものだからこそ、甘すぎない滋味深い味わいが飽きが来なく生き残るのかもしれない。そして、私はそれを欲す。潰れない店には理由がある。

 

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 それでは、今回のケーキを見てみよう。甘すぎなくて、お値段もお手頃で、大きい。貧乏独り暮らしの財布にも優しい。それでいて丁寧な細工が感じられる。仰々しくしようとしたら、なんでも鑑定団の大トリ骨董品紹介ナレーションのようになってしまった。

 

  まずはショートケーキ。上から写真を撮ったので分かりづらいのだが、生クリームとイチゴを挟んでいる部分が二層である。二層!!贅沢だ!!久しぶりに二層のショートケーキを食べた。夏にイチゴのショートケーキを食べれることも贅沢だ。桃やシャインマスカットのショートケーキも近頃見かけるが、私は断然イチゴ派だ。誕生日も絶対イチゴのケーキがいい。赤と白のコントラストが、めでたい感じがするのだ、なお、今回のおめでたいことは、オリックスバッファローズの優勝である。三連覇おめでとう!

 

  今、写真を見返したらモンブランの生クリーム並みに細く飾りが施されている。嬉しい。イチゴにも粉砂糖が振ってあり可愛い。そういえば、ショーケースには予約済と書かれた紙とホールケーキが待機していた。この店の近くの子が羨ましい。ホールケーキは子供の頃母が作ってくれたものか、学生時代友人の誕生日を祝う時に焼いたぐらいしか食べる機会が無かったな。

 

  次はシュークリーム。こちらは単独の写真があるので見てみよう。机の上が汚くて申し訳ない。なお、余談だがマグカップさらば青春の光のグッズである。お気に入りだ。

 

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 ずっしりと大きい。中にバニラビーンズが練りこまれたもったりとしたカスタードクリームとあっさりとした生クリームがみっちりと入っていた。これがとびっきりに美味しくてびっくりなのだ。

 

 ちょっと最後が「り」で終わる形容詞が乱発してしまった。冗談はさておき、美味しいことは変わらない。ローソンの大きなシュークリームもそうだが、カスタードと生クリームの2つを注入してくれているシュークリームが大好きだ、カスタードの卵の濃厚さと、生クリームのミルキー感がいい塩梅なのがいい。そしてこのお店は、甘すぎないのだ。重量はあるが、味は重くない。食べ終わりはもたれずに満足感だけ残る。

 

  カスタードクリームに感じられる、ふわりと香る洋酒の風味もいい。バニラビーンズがふんだんに使われているのか、黒い粒も見える。甘くなくても満足できるのは、この豊かな深みかもしれない。カスタードクリームに洋酒を使うケーキ大好き委員会に所属しているので、気づいた時に嬉しくて天井を見た。私の中のベストオブモンブランをのお店も、洋酒をカスタードに忍ばせていた。クリームに洋酒万歳。万歳三唱。都条例とかで義務にしてくれないかな。

 

 

 生地もいい。よく見ると底がパイ生地になっており、サクサクとした触感と織り込まれたバターの風味も感じられる。プロのケーキ屋にこんなこと言っては失礼極まりないのだが、少しお菓子作りを齧ったことがある人間は、シュークリームの生地の繊細な取り扱いが頭に浮かぶだろう。中々膨らまないシュークリームの生地は、爆発しないコロッケぐらい難易度が高い。そこにパイ生地をあてがっちゃうなんて、プロの器量は凄まじい。

 

 嬉しくて満足だ。本当はこの記事に、先日行った宮古市のことを書こうと思ったのだが、ケーキを口に入れた瞬間何も考えられなくなってしまった。夕方に見たディズニーの塔の上のラプンツェルの映画も面白かったし(ユージーンの挙動に一喜一憂して叫んでた)、朝からシーツも洗濯したし(全然洗っていなかった)、図書館で美術史の本も借りれたし(部屋にミュシャのでっかいポスターを貼ったら再燃した)、家事もこなした(キッチンハイターをようやく購入した)。オリックスでは山本由伸選手が15勝目を決めた(おめでとう)。いい週末ではないか。いい日に、いいケーキ。一人で過ごす静かな週末に相応しい。

 

 満足のいく週末の最後を締めくくる、とても素敵なケーキだった。町のケーキ屋にふらっと入って、ぜひ甘すぎないケーキを見つけてみてはいかがだろうか。