夏さ、また。

日々のことを、だらだら書いてるだけです。

朗読劇「ROAD to AVALON」

 無限に時間があった学生時代に好きだったものは、今の私の「好き」という感情の原材料だ。今は他の物事に関心があったとしても、あの頃の純度の高い気持ちが今の私を形作っている。延長線上に私がいる。

 

私が学生の頃好きだったもの。男性声優、世界史、チェロ。好きな声優さんの出演しているアニメやゲームを見て、ラジオを聞いていた。杉田智和のアニゲラディドゥーンと天才軍師だ。世界史が好きで、ずっと百科事典で国の歴史を読んでいた。部活でチェロを担当していてた。

 

この、学生時代の私を虜にした三つの柱。これが揃う現場に、20代後半でぶつかるとは思っていなかった。思い出の集合体。この前会った同級生は、私がチケットを取ったと言えばこう呼んだ。「お前の人生の答え合わせ」と。好きな声優を聞かれたら「中村さん杉田さん安元さん」と即答していた人生に、光が射した。

 

行ってきたぞー!!!!リーディングハイ!!ROAD to AVALON!!アーサー王と円卓の騎士の物語だ!!!藤沢朗読劇初参戦である!!生演奏はチェロが何台もあった!!そして、中村さんと杉田さんの現場は初である!!キャパオーバーでやばい!!なお記憶だよりになります。誤りもあります。ネタバレもあります。ご了承ください。

 

当落が出たのか確か2月初め。3人を同時に見たら死んでしまうと慌ててたら、友人から「コンテリング 親の奢りで」のチケットを確保したと連絡があった。安元さんと初朗読劇を体験して少し緊張は和らいだが、それでも楽しみが極まって緊張する。そのため、当日は高校の同級生である友人達に集まってもらいインドカレーを食べながら励ましを受けた。あんなに好きだったからよかったねという言葉を背に、単独で現場に向かった。

 

東京ガーデンシアターに到着して驚いたことは、観客の多様さだ。男性もいれば私より年上の方も多くいる。そう思えばギャルもいる。朗読劇としてはキャパが大きいと聞いていたが、4階席まで満員だった。親子で来ている人も見かけた。会場の天井は高く、チューニングの音が聞こえたということは生演奏だ。特効と照明も凄いのだと隣の人たちが話している。これは朗読劇なのかと思うほどの力を感じる。

 

物語としては、不老不死だったアーサー王が、エクスカリバーに見放されて老い始める。だが、平和の象徴であるアーサー王が衰えるということは誰かがつけ入る隙になる。国の平穏のためにも隠さねばならない。そんな中、アーサー王の幼少期を知る湖の乙女に命を救われたランスロットは、アーサー王の秘密を知ってしまう。そして、実力はあるものの円卓の騎士に何故か選ばれないモードレッドは、己にかけられた呪いの秘密を知ってしまい、アーサー王へ叛逆する。キャメロットが終焉へ向かう運命を描いた物語だ。

 

皆が運命と口にする。誰も見ることが出来ない湖の乙女を見ることが出来たランスロットは運命だと。少年がエクスカリバーを抜くのも、モードレッドが円卓の騎士になれないことも運命だ。不思議なことも、不条理なことも運命だ。超常的な存在である大魔法使いのマーリンや、人ではない存在である湖の乙女はよく口にしていた。

 

 運命の不条理さに、ひたむきに立ち向かったのはモードレッドであった。適切な努力をすれば、強く優しい騎士になればいつか円卓の騎士になれる。そう信じて歩んできたというのに、そもそも円卓の騎士になれない呪いをアーサー王とマーリンにかけられていた。忠誠の相手と、育ての親からの裏切り。そして運命という言葉の強烈さに打ちひしがれ、虚無感を覚え、全てを壊そうと決意した。

 

「運命」って、説明不足の無敵感がある言葉ですよね。奇跡という意味で使うのは素敵だけど、全ての理由を「運命」で納得させようとするのは些か短絡的すぎる。でも、魔法ってのは原理がよく分からないけどとにかく凄いから受け入れないとなって思う気持ちと、運命だから仕方ないって思ってしまう気持ちの根源は同じだと思うんですよ。超常現象みたいなもので、ただひれ伏すしかない。言い訳無用の確定事項。

 

でも、もしかしたら説明できないことを隠して「運命」という言葉の便利さに逃げている所もあるかもしれない。モードレッドが円卓の騎士になれないのは、運命ではなくてマーリンが「円卓の騎士になったら死んでしまう」未来を見たからであって、運命という言葉の説明の楽さに逃げなきゃ愛は伝わってたかもしれない。

 

未来を見通せるマーリンは、力が衰えて未来が見えなくなる。そこからは、リスクはあるものの可能性に満ちた日々を送ることなる。そのことを、「希望がみえた」と言っていた。アーサー王キャメロットの希望であるとも言っていた。

 

あんなに、運命を言ってた人が「運命なんぞクソ喰らえだ!」と叫んでいたのは、運命という確定的な不条理を受け入れることをやめて、抗うことを始めたからなのだろう。明日が分からない日々が、楽しかったんだと思う。

 

  円卓の騎士になる以前に、呪われて生まれたせいか生後すぐ殺される運命だったモードレッドを救った時から、孤児だった騎士達を育て始めた頃から、マーリンは楽しかったんだと思う。だから、過去の話を頻繁にしてしまう。運命に抗ってから、身体に半分流れている人間の要素が強くなったかもしれないし、そのせいで未来を見る魔の力がさらに弱まったのかもしれない。

 

先が分からない日々を過ごす、己で道を決めていく生活の尊さをマーリンは知って、人生の楽しさを子供たちに教えながら育てたのかも。

 

  いや、もっと昔からかもしれない。エクスカリバーが抜けなかったアーサー王を見た時、良き王様になると信じエクスカリバーの運命を己の魔法でねじ曲げてまで王様に仕立てあげた辺りから、マーリンの運命に対する徹底抗戦は始まっていたんだと思う。そう思うと、アーサー王伝説であり、ランスロット等の円卓の騎士やモードレッドなど個が強い役者は揃っていたが、なんかマーリンかアヴァロンへ至るまでの物語にも見えてきた。

 

歴史上の物語を我々は未来という立場から見ている。大河ドラマもそうだが、登場人物の歩みや結末は過去として変わることがない。長く語られてきたアーサー王物語だってそうだ。その登場人物が、何を考えて行動を起こし、運命なんクソ喰らえだって抗っている。歴史の出来事としては同じことかもしれないけど、色んな人の想いが集まって、新しい解釈として新しい物語になる。同じ死でも、清々しさが異なるようだった。

 

皆が戦い、誰かが死ぬ。その結末は変わらない。でも、演劇が終わったあとの爽やかさは、アーサー王物語の中でもあんまりないように思えた。魔法のように命が煌めいて、再び希望を見据えて劇は終わった。スタンディングオベーション、圧巻である。

 

ストーリーの感想を熱く書いてしまった。他の部分の感想も少し。幕が上がって目をひいたのは照明だ。水玉のようなイルミネーションというのだろうか。一列に無数の電球を吊り下げており、これらが点滅することで雨が降ったり、瞬く夜空になったり、移動する魔法になったりする。これがとても美しかった。

 

ランスロットが生還したお祝いで、夜にみんなで宴を行う。まだ騎士たちを子供扱いするマーリンが、魔法でドラゴンに変化したり、過去の戦いをおとぎ話のように語ってくれる。騎士たちは何回目だと呆れながらも、驚いた振りをしたり喜んだりする。その夜空のシーンだったかと思うが、星が瞬くのだ。それを眺めているランスロット役の中村さんが素敵だった。

 

音楽も良かった!チェロが5台ってすごいなって思っていたのだが、みんな兼役が多い。ギターも弾けばピアノも弾く。重低音が響くと思ったら、ドラムセットは2台だ。歌手の方の生歌だってある。豪華!チェロは人の声に最も近いと聞いたことがある、アヴァロンに到達した名も無き人たちの声なのかもしれない。

 

真ん中の人は指揮も笛もやっていて、凄い人だなって思ってたら劇中歌の作曲者だった。プレイヤーでも作曲家でもあるんですか!?その方が弾いているあいだ指揮者も不在になるのだが、照明とバチッと合うので不思議。魔法か?いや、舞台を作った皆さんの高度な技術なんだろう。凄かった。

 

演技も凄かったんですよ。まず衣装!衣装!?朗読劇に、オリジナルの衣装!?しかも騎士のような。全体的に黒い衣装なんですが、ツヤがあってそれぞれ形も異なって。元ジャニオタは、個性や役どころによって丈感や様式は変化はするものの、全体的にまとまっているような衣装が大好きです。

 

マーリン役の大塚明夫さんは兄がやっていたメタルギアのイメージ。腹から声を出すと、会場がビリビリ痺れるんですよ。凄い優しいおじいさん魔法使いなんですが、この人は「人間」じゃないんだなと忘れしまうほど。どれだけの時間を人間と過ごしたのだろう。

 

モードレッド役の杉田さんと大塚さんが揃うと、メタルギアのピースメーカーを思い出します。裏切ったモードレッドをマーリンが叱り、ケジメをつけようとするモードレッドに諭すシーンが一番好きでした。どんなに立派な騎士なっても、仲直りの仕方は子供の頃と同じっていうのが、長く生きたせいでずっと子供扱いしてしまうマーリンらしくて素敵でした。でも、それが一番効くんですよね。何回も書いてますが、この話はマーリンの物語でもあると思ってます。

 

アーサー王の諏訪部さん。私の中ではテニプリ跡部様でFateギルガメッシュで、うたプリでは神宮寺レン。全部様付けで呼んでしまう気品ある声のイメージです。凄かった……モードレッドやガレスが変化のマントでアーサー王に化けたりするのですが、モードレッドの時は急に固く、ガレスの時は声が若返るんですよ。びっくり。めっちゃお顔も演技していて、朗読劇?はて?となります。

 

 最後のカーテンコールで、立ち位置的にクレーンで上下するためのジェスチャーがかわいいし、話を回して頂いてありがたかった。安元さんが後輩ポジにいるのを久しぶりに見ました。

 

アーサー王は器の大きい人でしたね。幼い頃に見えた湖の乙女は見ることが出来なくなったり、そもそもエクスカリバーにも選ばれてないと気づいた時も受け入れる。モードレッドが裏切った時、エクスカリバーに忠誠を誓ったのではない、このアーサー王に誓ったと言ってましたが、本心だと思います。それぐらい、命を懸けていい王でした。

 

長髪に髭というのは中世の王様なのですが、最後アヴァロンに登るところで、湖の乙女が近くにいたからかもしれませんが神々しすぎてイエス・キリストみたいでちょっと笑いました。

 

湖の乙女の沢城みゆきさん。人間じゃないことがすぐ伝わりました。なんか人間の話すテンポとイントネーションから、ほんのちょっとズレているんですよ。久しぶりに人間と話したからか、人語を忘れたような。

 

 そして、人と話すこと心底嬉しそうなんですよね。エクスカリバーを返して欲しいとか、傷を癒すために人間じゃ無くすとか、道理もズレてて残酷だったり。でも嬉しそうだし、妖精の中では当たり前。その有無を言わない純粋さが伝わってきました。マーリンの魔法に驚いてるの、可愛かったなあ!

 

衣装が可愛かった!!白いふわふわの衣装に、湖モチーフの青と銀のキラキラしたアクセサリーが素敵でした。1番上の方にいるので、アヴァロンから迎えに来てくれた天使のようにもみえました。神々しかったです。アーサー王の幼少期を演じている時、姿は同じなのに男の子なんですよ……本当に声優さんって凄いんだなって思ったシーンでした。

 

湖の乙女のこと、みんなは途中で見えたのにモードレッドだけ見えなかったのも面白かったですよね。ガレスといい、ちょこちょこシリアス最高潮の部分で笑いどころが放り込まれ、会場が泣き笑いになってるのも、悲しくない物語なんだよってことが強調されててよかったです。

 

ガレス役の梅原裕一郎さん。あんスタやSideMをプレイしている友人から名前をよく聞く。声は低く落ち着いているのだが、イベントでその顔を見ると唖然としてしまうほどの顔の良さ。実際、顔の小ささと肌の透明感に俳優さんがいると思いました。月9に出ていませんでしたか?アナウンサーのような清潔感。

 

ガレスは間が悪いという設定がありまして、本当に丁度よく間が悪くて笑いました。救われた。ガレスのおかげで、泣き笑いの爽やかな物語になりました。友人たちが顔の話ばかりするのでその事しか知らなかったのですが、この群雄買っのようなキャスト陣の中で、埋もれず際立っていて本当に凄い演技でした。笑わせるって、絶対難しいよね。

 

  真面目で素直な優しい好青年なので、本当に申し訳なさそうにしているのが面白かったです。円卓の騎士の中では年少なのですが、参謀として理知的なのが格好いい。優しいので、マーリンの魔法にもリアクションをとるようにみんなに頼んだり。他のメンツが血気盛んな騎士なので、ずっと、いい子だ……マーリン子育て大成功だよ……って心の中で頷いてました。

 

ガヴェイン役の安元洋貴さん。結婚したい声優ランキング私的1位。眼鏡をかけてなくて、髪の毛も白っぽい金髪でした。骨格がいいからか、パワー系の騎士に見えました。座り方もそれぞれ個性があって、神経質そうなモードレッドは背筋を伸ばして座ったり、ガレスはお行儀がよかったりしたのですが、男らしくがっしり座るガヴェイン卿は最高で大正義。

 

太陽の騎士という名の通り、陽の光を浴びると強くなるのですが、照明でぱぁーと照らされた時、輝いて見えて格好良かった。勝手に今回の朗読劇は当て書きだと思っているのですが、杉田さん中村さんよりちょっと世代が上な安元さんの兄貴役がハマってました。

 

我が弟は間が悪い……!と嘆くシーンのもったいぶった感じも笑いましたね! ガヴェインのセリフの速度とともに、我々観客も何が起こったか理解始めるような!パワー系と思いきや参謀であるガレスの兄なので、アーサー王の矛盾点にいち早く気づいて提言して窘められたり、誠実な男でした。

 

序盤の「夫婦喧嘩は他所でやれ!」というセリフ、あの二人が好きな人達はみんな耳を疑ったのではないでしょうか。モードレッドを許すシーンで、モードレッドはいつも勝手に1人になろうとしてしまうと話しているところ、物凄く頷いてしまった。1人が好きだと誤解されているけど、実は臆病だから1人に自然になってしまうことってあるよなあ。傷つきたくないから1人でいるような。そんな内容の台詞をモードレッドに言っていて、一番ぐっときてしまった。

 

安元さんはお客さん思いなので、ずっと手を振って下さったり、上の端の席の方が見えるように身を乗り出して手を振ってくださってました。そして、この座組が一番嬉しいのは安元さんなんでしょうね!終始ニコニコしておられました。楽しくて楽しくてたまらなさそうで、いつもは司会みたいなこともするような時間でそれをせずニコニコしてらしたので、あっ!年長者ポジじゃないんだ今日!って勝手にこっちが嬉しかったです。役者として尊敬していると常々語っていた中村さんを始め、みんなで最高の舞台が出来て本当によかったです。

 

主役じゃないからと引いている演技が多かったんですが、ここぞという見せ場でバチッと決めてくるのが、安元さんのファンとして嬉しかったです。このメンバーの中で、一番血が通ってる人なんだなって言葉の節々で伝わりました。ガヴェイン卿大好き!

 

ランスロット役の中村悠一さん。第一声を聞いた時、好青年役だー!!と沸き立ちました。ランスロットのイメージが、アーサー王の妻と浮気する正典の方だったので、色男か二枚目かと思いきや好青年!しかも主人公!声が明るい!!そして強い!!最近はちょっと強すぎるキャラとか、過去が重いキャラとか多かったように思えるので、青年だー!と喜んでました。

 

巻き込まれ系主人公でしたね。最後まで真っ直ぐな人でした。モードレッドが卑屈なことを口にする度に諌めて正しい評価を下す。そんな真っ直ぐなところが素敵でした。ベタベタしないまでも、実力を認めった無二の友人だったんだと思います。相棒というような。

 

怒りに満ちたモードレッドとやり合う時、凄みのある声で「俺もだ」と言った時、さっきまで湖の乙女と優しく語り合っていた青年はどこへ行った!?とピリッとした緊張感がありました。「お前とは一度本気でやりあってみたかった」という返答なのですが、この世代を代表する役者であるお2人が並んで言い合うってのが熱い展開でした。

 

杉田さんの方が声優として光が当たるのが早く、色んなラジオやら現場で「中村くんというすごい人がいるんだ」と関係ないのに話していき、段々と中村さんが認知されていき、マクロス等の大役を勝ち取った時代を思い出しました。逆に、杉田さんがイベントやラジオとかでユニークなキャラが人気になったせいか、ちょっと演技という部分よりもそっちが評価されてしまう時代のことも思い出しました。

 

お2人とも凄い役者なんですが、評価の波に紆余曲折があったように思います。いや、思ってるだけでお2人はずっと変わらないのですが。さらに人気になるとガッツリ共演も少なくなってしまうし、多忙だよねって半ば諦めていました。

 

  それが、最高の舞台で肩を並べて役に入り込んでいる。別に自分は最前線で常に応援してきた訳では無いのですが、感慨深くなりました。この舞台が見れてよかった。最高の舞台を生で浴びれてよかった。そう、心から思ったのでした。

 

王道主人公のランスロット。モードレッドが裏切っても最後まで諦めない姿が格好良かったです。色々あったのにそれを許して、2人で並んでキャメロット軍の最前線に並ぶ。前も後ろもなく、横に並んでいるというのがぐっときました。戦友という言葉がよく似合う。モードレッドの色んな事情や葛藤に耳を傾け、肯定を否定もせずにまるっと受け止める感じがね。善悪で人を裁断しない感じが印象的でした。

 

個人的、今回MVPはモードレッド役の杉田さんだと思います。杉田さんのエンターティナーな部分というところいいますか、観客を全員楽しませ魅了させるという精神が全面に出ていて、学生時代の友人に杉田さんのファンがいるのですが、今すぐ連絡取りたいって思いました。貴女が好きな人、えらいこっちゃ最高だぞって。

 

衣装がマントだったのですが、カーテンコールの時何回も翻してくれるんです。アーサー王役の諏訪部さんが話す時は騎士のようにひざまづき、静かに頭を垂れる。中村さんが座長として淡々と何かありますか?と行った時、「やっぱ中村くんだよ!一緒に戦えてよかった」と仰った時、会場が拍手と頷きの嵐でしたね。「初めのリーハイ楽しかったです!」といい、私たち観客もといファンが欲しい言葉を察してくれる。共感性の高い人なんだと思います。サービス精神が旺盛すぎて、こんなにして貰っていいんですかと拝みたくなりました。

 

そんな素敵な人が朗読劇に出演しているとどうなるか。「劇」になります。まず台本がずっと胸あたりにあるため、表情がよく見えます。そして、その表情や細やかな仕草が演技とリンクします。アーサー王を憎く思っている時の眼光、息を飲むものがありました。全ては、私たち観客をこの劇に没入させるため。私たち観客がリーハイの世界にのめり込むために、普通の朗読劇とは違うってことを杉田さんの演技を通してジンジンと感じることになります。眼力が凄かった。

 

この作品の中で、一番の葛藤を抱いていたモードレッド。キャメロットで一番の実力を持つも円卓の騎士になれず、その強ささえも湖の乙女の力を得たランスロットに奪われそうになる。その上、忠誠を誓った相手と育ての親の裏切り。四面楚歌。やけを起こしても仕方ない状況だよ。

 

ずっと真面目すぎて堅物で繊細なキャラだと思っていたのですが、ランスロットを自室に休ませて服を貸してあげるシーン等、屈折したところも確かにあるし、その度に友人たちから違うぞって話しかけられて、納得はしないけど飲み込んでる。それでも、優しい友人たちと同じように、人に優しくありたいと願い実行する人でした。自分の境遇から心の痛みをよく知ってるかもしれません。

 

自分が何者なのか、居場所はどこか、生まれてきた意味はなんなのか。どの人間にも与えられた根源のようなもの。今の世は娯楽が多いので、自問自答せずに有耶無耶して生きていけますが、中世の時代はそうはいかない。その上、それら全てが不明なのは悩んでしまうし、葛藤をたった一言「運命」で片付けられたらたまったものじゃない。

 

マーリンは運命に抗ってから楽しくなったと言ってましたが、生まれてからずっと戦ってたのはモードレッドでした。だからこそ絶望もする。でもまた抗って、ランスロットの隣に立った。心の闇と怨嗟の炎を纏ってはいるけど、今度はその力をキャメロットと仲間を守るために振るう姿、格好良かった。

 

葛藤、そしてそれでも前を向く姿勢。その人間らしさが、誰よりも美しかった。身近にも感じられるし、高潔にも思える。そんな素敵なモードレッドを演じた杉田さんに拍手喝采です。本当に凄かったんですよ。私の語彙力の少なさですごい!しか言えないのがもどかしいのですが。

 

カーテンコールで大塚さんの名前がハブられたり、沢城さんの素敵なお言葉があったり、みんなやり遂げで燃え尽きたのか言葉少なで、「何か言うことないの!?」って戸惑ったり。テーマ曲の生演奏があったりね。大千穐楽、盛り沢山でした。

 

一週間以上かけて、何とか感想を形にしました。時が経てば経つほど、忘れてしまうのが悔しい。劇が終わった瞬間で時が終わればいいのに。私にエクスカリバーの加護はないので、時は進むし私は老いる。仕方ない。また行きたいなと思うばかりです。

 

アーサー王物語の終焉という内容だったので、悲しく苦しい話なのだろうと思っていましたが、爽やかな希望の光で締め括られました。本当に面白かったです。目を開けても閉じても楽しいってのもいいですね。

 

皆さんもぜひ、リーハイシリーズももちろんですが、朗読劇(と括っていいか分かりませんが)というジャンルの現場にも行ってみてください。生の演技を浴びることは、生活の活力になりますよ。

 

この舞台を見たことある人は、こんなことあったなあって思い出したり、逆にここ間違ってるぞ!って思ったりして貰えたらありがたいです。楽しかった!!学生時代の私の魂は成仏しました。まだやることがあるから、アヴァロンは行けないけど!

 

ROAD to AVALON | 新感覚・音楽朗読劇 READING HIGH(リーディング・ハイ)

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